#014 10年ぶりでも大丈夫? ブランクがある社会人の吹奏楽再開ガイド

楽器ケースは、実家の押し入れに入ったまま。吹奏楽の演奏会を聴くたびに、「また吹いてみたいな」と思う。でも、最後に楽器を吹いたのは10年、20年前。今さら戻れるのだろうか──。

そんなふうにためらわせている理由は、たいてい決まっています。ブランク、楽器、時間、見学への気おくれ、そして「下手になっていないか」という不安。けれど、その一つひとつを分解してみると、どれも思っているほど高い壁ではありません。

この記事では、大人が吹奏楽を再開するときに抱える5つの不安を順に取り上げ、事実に照らして整理していきます。

なぜ今、「また吹きたい」大人がいるのか

学校を卒業しても管楽器を続けたい・また手にしたいという大人は、いつの時代にも一定数います。再開のきっかけは人それぞれです。

  • 子どもが吹奏楽を始めたのを見て、自分も……と思った
  • 仕事や子育てが一段落し、自分の時間が持てるようになった
  • 久しぶりに演奏会を聴いて、舞台で吹いていた頃を思い出した

やりたい気持ちはある。でも、何かが引っかかって動けない──その「何か」の正体は、たいてい次の5つの不安に整理できます。

大人の吹奏楽再開を阻む「5つの不安」

市民楽団への入団を検討する人のSNS投稿や、これまで取得した全国の市民楽団の募集情報などから、再開をためらわせる不安は大きく次の5つに整理できます。

不安よく聞く声実態
①ブランク・技術「もう10年、20年も吹いていない」体は覚えている。長いブランクからの復帰者も珍しくない
②楽器がない「マイ楽器が条件だと厳しい」中古・レンタル・楽団の貸出楽器で解決できる
③仕事・家庭との両立「忙しくて続けられるか不安」練習は週1〜月2回が中心。求める参加度は団による
④見学が怖い「人間関係に入るのが怖い」見学は入団前提ではない。見るだけでよい
⑤レベルへの劣等感「下手で迷惑をかけるかも」大人の楽団は「楽しむことが正解」

以下、一つずつ見ていきます。

① ブランクが長くても、本当にまた吹けるのか?

「もう10年、20年も吹いていない」というブランクは、再開を考える人がまず気にする点です。

ですが、体が覚えている、という感覚は確かにあります。楽器の構え方や息の入れ方は、頭で思い出す前に体が反応することが多く、久しぶりに音を出してみると「意外と吹ける」と感じる人は少なくありません。最初の数音こそ不安でも、何回か練習に通ううちに、アンブシュア(口の形)や息の使い方は戻ってきます。

そして市民楽団には、長いブランクを経て戻ってきた人が珍しくありません。実際、全国の市民吹奏楽団の募集情報を調べると、「ブランクがあっても大丈夫」「ブランクOK」と募集文にはっきり書いている団体が、確認できただけで54団体ありました。これはウェブ上の募集ページから読み取れたものだけの数字で、SNSでの募集投稿まで含めると「ブランクOK」を謳っている楽団はさらに多いと考えられます。あなたが「一番ブランクが長い人」になる心配は、まずしなくて大丈夫です。

② 楽器を持っていないと入れないのか?

「楽器を持っていない=入れない」と思い込んでいる人が多いのですが、これは誤解です。楽器の入手手段は複数あります。

  • 中古楽器:アルトサックスなら5〜10万円台、ホルンも中古なら10万円台から手に入ります
  • レンタル:楽器店のレンタルなら月1万円前後・初期費用ゼロで始められます
  • 楽団の貸出楽器:チューバ・バリトンサックスなどの大型楽器や打楽器は、団が保有して貸し出している場合が多くあります

楽器にかかる費用の詳細は、別記事で扱っています(→YPWOラボ013:「吹奏楽はお金がかかる」は本当か)。「百万円の楽器がないと吹奏楽はできない」というのは強豪校・プロ仕様の話であって、再開の入り口とは関係ありません。入団前に「楽器を持っていない」と相談しても、何の問題もありません。

③ 仕事や家庭と、両立できるのか?

練習は「週1回」をイメージしている人が多いかもしれませんが、月2回程度の団も意外と多くあります。YPWOラボの調査(練習頻度の記載がある213団体)では、週1回が約62%、月2回が約22%と、この2パターンで8割以上を占めます。仕事や家庭が忙しい時期が続くようなら、月2回程度の団を探してみるのも一つの手です。

参加への考え方も団によって差があります。仕事や家庭の事情による欠席を頭ごなしに責めるような団は多くありません。とはいえ「できるだけ練習に来てほしい」というのが本音の団も多く、参加率を大切にする団もあります。どのくらいの参加を求められるかは団ごとに違うので、見学のときに確認しておくと安心です。

「余裕ができたら始めよう」と考えていると、その余裕はなかなか訪れません。むしろ、生活に無理なく収まるペースの団を先に見つけてしまうほうが、再開への近道です。

④ 見学に行くのが、そもそも怖い

問い合わせること自体が緊張する、すでにできあがった人間関係に入っていくのが怖い──この心理的なハードルが、実は一番の壁だという人もいます。怖いと感じるのは、自然なことです。

ただ、知っておきたいのは、見学は楽団にとってごく当たり前のステップで、入団を前提としたものではない、ということです。その日は「見るだけ」「話を聞くだけ」で構いませんし、その場で入団を決める必要もありません。一度行ってみて「何か違う」と感じれば、それで終わりにしてもいい。何かを背負って行く場ではない、と考えると、最初の一歩は少し軽くなるのではないでしょうか。

⑤ 下手で、周りに迷惑をかけないか?

「自分の下手さで足を引っ張るかも」「録音や動画で聴いたら想像以上に上手くて怖気づいた」──レベルへの劣等感も、根深い不安です。

ここで知っておきたいのが、大人の市民楽団は、学校の吹奏楽部とは価値観が根本的に違うということです。

項目学校の吹奏楽部大人の市民楽団
主な目的コンクール・大会での評価音楽を楽しむこと
失敗への姿勢正確さや完成度を重視する楽しさや継続性を大切にする
関係性先輩・顧問中心の上下関係年齢や職業の異なる仲間
続け方引退がある生涯続けられる

学校吹奏楽の「完璧でなければならない」という感覚を引きずったままだと、再開のハードルは高く感じられます。でも、大人の楽団の多くは「楽しむことが正解」という文化を持っています。上手い・下手よりも、「一緒に音楽を楽しめるか」が大切にされる場です。

そもそも、市民楽団の団員自身も、かつては初心者であり、ブランクからの復帰組であることが少なくありません。隣で吹いている人も、何年ものブランクを越えて戻ってきた一人かもしれない。だからこそ「最初から完璧に吹けること」を求める空気は、ほとんどないのです。

実際に市民楽団で活動している人の中には、「高校卒業から20年ぶりに楽器を出した」「子育てが一段落してから再開した」という人が珍しくありません。「上手い人ばかりの中で自分だけ浮く」という心配は、多くの場合、入ってみると実感とかなり違います。

最後に──「いつか」を「今」に変える

大人の吹奏楽再開を阻むのは、技術でも楽器でもなく、たいていは「最初の一歩の心理的ハードル」です。けれど、その壁の正体を一つずつ分解してみると、どれも事実と仕組みで越えられるものばかりでした。

「子どもが大きくなったら」「仕事が落ち着いたら」と先送りしているうちに、時間だけが過ぎていきます。気になる楽団があるなら、まずは見学を申し込んでみる。再開は、たいていそこから始まります。

なお、「再開したいけれど費用も気になる」という方は、別記事で市民楽団の団費や演奏会費の相場を詳しく紹介していますので、下記リンクから参照してみてください。

横浜近郊で吹奏楽の再開を考えているなら、YPWOでも随時、練習の見学を受け付けています。YPWOにも、子育てなどで10年ほどのブランクを経て楽器を再開した団員が複数います。「また吹いてみたい」というその気持ちがあるうちに、一度のぞいてみませんか。


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